- テーマ:FloEFDによる音場の直接計算
- キーワード:音場・音響、CFD、圧縮性、圧力波、気柱共鳴、開口端反射
音響解析では流れ・音・構造の問題を扱うため、計算効率などから流体と音響、構造解析を個別に実施したのちに一方向連成問題として行うことが一般的です。
問題によっては流体解析で、圧縮性ナビエ・ストークス方程式と理想気体の状態方程式を解くことで流体と音響の解を同時に得ることが可能な直接流体音響解析(Direct Acoustic Simulation)が可能です。
DASは大規模計算の需要が高まるにつれて可能になりつつありますが、現状では計算手法や境界条件などの問題で適用出来る範囲が限られ、特に音響解析で扱う圧力変動の振幅は流体力学で問題とされる値に比べ小さいことから、高精度と低散逸なソルバーが必要になります。
今回は単管の気柱共鳴を例にSimcenter FloEFDのDASへの適用を紹介します。
この事例では、両端に開口部を持つ直管の気柱共鳴現象を取り上げます。模式図で示すように長さ=100mm、直径=10mmの直管を空間中に設置し、構造物として変形や圧力の相互作用はないものとしています。
この両側に開口を持つ直管の気柱共鳴は、模式図で示すような定常波のパターンになり振動する周波数は次式で表されます。
温度=20.4℃の空気密度(ρ)=1.20387 kg/m3、音速(V )=343.1465m/sとして直管長さ(l )=0.1mで2倍振動の周波数を求めると、
- Simcenter FloEFDでは以下の計算条件により、入口から出口まで波が到達する時間の24周期に相当する時刻=0.007秒までを計算し、理想気体として状態方程式に従うように設定しています(温度毎のテーブルデータとして定義していますがここでは、温度=20.4℃の値のみを示します)。
項目 | 値 |
---|---|
流体 | |
温度=20.4℃での物性値 | 空気 |
密度 | 1.20387 kg/m^3 |
粘性 | 1.8210E-05 kg/m*s |
体積弾性率 | 3.2000E-03 1/K |
熱伝導率 | 2.5596E-02 W/m*K |
比熱 | 1006.0895 K/kg*K |
乱流モデル | 層流 |
壁関数 | Van Driest減衰関数 |
物理時間 | 0.006 秒 |
- 入口境界には以下の図に示すような周期変動を持つ圧力波を負荷しています(図では7.25E-4秒までの表示になっていますが計算では0.006秒まで周期変動を与えています)。
- 計算された圧力波の進行を動画で示します。進行した圧力波が開口端で反射し周期的な変動が生じていることが分かります。
- 密度変化の時刻歴図では時刻=0.003秒以降でほぼ定常状態になっており、圧力の周波数スペクトル=3573.0486Hzになり2倍振動および3倍振動も理論式で求めた周波数が概ね計算されています。